Webサイトにおける情報設計とその手法

ウェブサイトを訪れるユーザーにとって、情報を迅速かつ容易に探し出すことができるかどうかは、そのウェブサイトを使い続けるかどうかの重要な要素の一つです。ユーザーが求めている情報を直感的に見つけられるか、理解できるかは、情報設計の質に大いに依存します。

この記事では、情報設計とは何か、その基本要素は何か、どのような手法が存在するのか、そしてそのベストプラクティスは何かについて詳しく説明します。また、情報設計がユーザーエクスペリエンス(UX)設計とどのように関連しているのかについても説明します。情報設計の手法を理解し、適用することで、ウェブサイトのユーザビリティとユーザーエクスペリエンスを向上させ、結果的にウェブサイトの成功につなげることができると思います。

目次

情報設計とは?

情報設計とは、情報を整理し、ユーザーがその情報を効果的に理解、利用できるようにするための設計プロセスを指します。これは、ウェブサイト、アプリケーション、ソフトウェアなど、デジタルインターフェース全体における根幹的な概念であり、その目的はユーザーが必要とする情報を簡単に見つけ、その情報を理解し、適切に利用できるようにすることです。

情報設計の役割は、情報の流れを明確にし、ユーザーにとって使いやすい構造を作ることにあります。これは、ユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させ、結果的にウェブサイトやアプリケーションの利用効率を高めます。

例えば、大規模なEコマースサイトがあるとします。そこには、何千もの商品があり、ユーザーは特定の商品を見つけるために時間をかけたくありません。ここで情報設計の役割が重要になります。良い情報設計により、商品は適切にカテゴライズされ、ユーザーは容易に目的の商品を見つけることができます。これはユーザーエクスペリエンスを向上させ、結果的には売上向上にもつながります。

ただし、情報設計とは、レイアウトやビジュアルデザインとは異なることに注意が必要です。これらはウェブサイトやアプリケーションの「表面的な」部分を担当するものであり、一方、情報設計はその「骨組み」や「構造」を担当します。言い換えれば、情報設計はデジタルプロダクトの「アーキテクチャ」であり、その情報の流れと構造を設計します。この点を理解することは、情報設計の真の価値と重要性を理解する上で必須です。

情報設計の基本的な要素


情報設計というと専門的な印象を持たれるかもしれませんが、ウェブサイトを作成する際には、ユーザーが必要な情報を効率的に見つけ出し、理解しやすい形で提示するための非常に重要なプロセスです。このセクションでは、情報設計がどのような要素から構成され、それぞれが具体的にどのような役割を果たしているのかについて説明します。

情報設計の基本的な要素とその具体的な例は以下の通りです。

  1. サイトの構造(サイトマップ):サイトの全体像を理解するために使用されます。各ページの位置関係やリンクの結びつきを明確にし、全体の流れを理解するのに役立ちます。例えば、あるECサイトでは、サイトマップを「ホーム」→「カテゴリー(服、靴、アクセサリー等)」→「サブカテゴリー(メンズ、レディース、子供等)」→「商品詳細ページ」と階層化することで、ユーザーが目的の商品を容易に探し出せるように設計されています。
  2. ページの構造(ワイヤーフレーム、レイアウト):個々のページがどのように構成されるべきかを視覚的に示します。レイアウトといってもデザイン上のレイアウトや表現としての規定ではなく、あくまで情報の優先順位や表示方法を考慮するものです。例として、ニュースサイトでは、ページ上部に重要なニュースのヘッドラインを配置し、下部にはカテゴリ別の記事を配置するなど、情報の優先度に基づいたレイアウトが行われます。
  3. ナビゲーションとユーザーの道筋(ブレッドクラム、メニューなど):ユーザーがウェブサイト内で迷わずに目的の情報に到達できるよう、ナビゲーションは重要な役割を果たします。具体的な例として、ブログサイトでは、ブレッドクラムを利用して現在のページがサイト全体のどの位置にあるかを明示し、また上部には全カテゴリーの一覧を表示するメニューバーを設けることで、ユーザーが迷わずに目的の記事に到達できるようにしています。
  4. ラベリングと用語(コンテンツの名前付けと整理):情報を整理し、ユーザーが簡単に理解できるようにする要素です。ある健康情報サイトでは、一般的に理解しやすい用語でラベル付けされたカテゴリー(例:「ダイエット」「運動法」「食事のコツ」等)を設け、ユーザーが目的の情報を効率良く探し出せるよう配慮しています。

これらの要素が情報設計の基本を形成し、ユーザーがウェブサイトを使いやすく、情報を簡単に探し出すための基礎となります。

情報設計の手法

情報設計を成功させるためには、ただ情報を整理し、見やすくするだけでは不十分です。ユーザーの視点を理解し、その視点に基づいて設計を行うことが重要となります。このセクションでは、情報設計のための実践的な手法を4つ紹介します。

  1. カードソーティング:ユーザーにさまざまなトピックや項目が書かれたカードを与え、それらを自身の認識に基づいてグループ化してもらいます。例えば、ウェブショップでの商品分類や、情報サイトの記事カテゴリー等、ユーザーがどのように情報を分けるか、その結果をサイト構造に反映することで直感的に操作できるサイトになります。
  2. ユーザーインタビューとリサーチ:具体的なインタビューの例としては、ユーザーがウェブサイトを訪れる目的や、サイト内で遭遇した問題、利用上の困難点等を直接聞き出すことです。この結果を元に、ウェブサイトの改善点を見つけ出し、ユーザー体験を向上させます。
  3. ユーザーペルソナの使用:ペルソナは一般的に、年齢、性別、職業、趣味、家族構成などの基本情報、さらに具体的な行動パターン、好み、課題などをもつ架空のユーザーです。このペルソナに基づき、その視点でサイトの利便性を検討したり、設計を行ったりします。
  4. ユーザーフローマッピング:具体的な例としては、ユーザーがサイトに訪れたときに最初に訪れるページ(ランディングページ)から、目的を達成するためのステップを図解化することです。これにより、ユーザーが目的達成に至るまでの流れを明確にし、その流れをスムーズにする設計を行います。

これらの手法を組み合わせることにより、ユーザーにとって使いやすい、理解しやすいウェブサイトの設計が可能となります。

各手法に関する具体的な記事は以下をご覧ください。

情報設計の最適な手法

情報設計を成功させるための鍵となるのは、そのベストプラクティスを適切に理解し、それらをプロジェクトに適用することです。本セクションでは、ウェブサイトが一貫性と規範性、簡潔性と明瞭性、そしてデータに基づいたユーザー中心の設計を採用することの重要性について説明します。これらの原則を踏まえた情報設計は、訪問者が求める情報に短時間で辿り着くことを可能にし、結果としてユーザー体験を向上させることにつながります。

  1. 一貫性と規範性:情報設計における一貫性は、サイト全体の各要素が連携して機能することを意味します。ページ間でのナビゲーション、デザイン、色使い、フォントの使用法などがこれに該当します。また、規範性とは、ユーザーが既に慣れ親しんでいるデザインのパターンや行動規範に従うことを指します。例えば、ショッピングカートのアイコンは通常、ウェブサイトの右上隅に表示されます。これは一般的なユーザー行動規範に基づくもので、これを守ることでユーザーはサイトを直感的に理解しやすくなります。
  2. 簡潔性と明瞭性:訪問者が求める情報を効率的に探し出せるよう、ウェブサイトの情報は簡潔かつ明瞭でなければなりません。テキストは必要最小限に留め、わかりやすい言葉で表現することが重要です。また、用語やラベリングは一般的な言葉を使用し、業界の専門用語は避けるべきです。
  3. データに基づいたユーザー中心の設計:情報設計はユーザーのニーズと行動に対応するべきです。ユーザー中心の設計とは、ウェブサイトがその利用者の視点を中心に据え、利用者のニーズや行動パターンに最適化された構造となるよう設計されることを指します。これにはユーザーインタビューやカードソーティングなどのユーザーリサーチや、アナリティクスツールからのデータを基にした設計が含まれます。このようなデータに基づいた設計は、ユーザー体験を向上させるために何が機能するのか、何が必要なのかを具体的に把握するための最良の方法と言えます。

これらの原則を遵守した情報設計は、訪問者にとって使いやすく、理解しやすいウェブサイトを作り出します。その結果、ユーザーエンゲージメントと滞在時間の向上、そして目標達成率の増加につながりますので、逸脱した設計にならないように注意しましょう。

情報設計とUX設計の関係

情報設計とUX設計は、互いに深く関連し、良好なウェブサイトやアプリケーションの開発に不可欠な要素となります。このセクションでは、これら二つの概念の相違点と相関性、そして情報設計がどのようにユーザーエクスペリエンス(UX)を改善するのかについて解説します。

二つの概念の相違と相関性:情報設計とUX設計は異なるが、密接に連携する役割を果たします。情報設計は、情報がどのように組織化、構造化され、ユーザーがその情報をどのように探し、理解するかを扱います。一方、UX設計は、製品やサービスの全体的なユーザー体験をデザインする役割を担っており、情報設計はその一部となります。UX設計はユーザーが製品やサービスとどのように対話するか、感じるかを包括的に考える一方で、情報設計はその対話の中での情報の流れと理解を重視します。

良好な情報設計が生むUXの改善:情報設計が適切に行われると、ユーザーは必要な情報を迅速に見つけ、理解することが容易になります。これにより、ユーザーエクスペリエンス全体が向上します。一貫したラベリング、直感的なサイト構造、明確なナビゲーションなどは、ユーザーが迷うことなく、効率良く情報を探すことを可能にします。また、ユーザーが求める情報を瞬時に提供することで、ユーザーの満足度やロイヤリティを高め、ユーザーが目標を達成するのを助けます。その結果、製品やサービスの成功に寄与します。

情報設計とUX設計は密接に連携し、一緒に動作することでユーザーにとっての体験価値を高めます。そのため、どちらもウェブサイトやアプリケーションの設計において重要な役割を果たします。

まとめ

本記事で情報設計の重要性とその実行方法についてご紹介しました。一貫性と規範性、簡潔性と明瞭性、そしてユーザー中心の設計は、情報を探すユーザーにとって重要です。

今回の情報設計の基本要素とベストプラクティスを踏まえて、ウェブサイトやアプリケーションの設計に取り組んでみてください。あなたのサイトがより直感的で使いやすく、ユーザーフレンドリーになることを願っています。

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