ウェブサイトのリニューアルは事業成果の向上に欠かせませんが、その成功の鍵はリニューアル前の準備、特に既存サイトの分析にあります。この記事では、ビジネスへの貢献度分析から始まり、ユーザビヘイビア分析、ユーザーフィードバックの取得、競合分析に至るまで、分析の手順と必要なツールを具体的に解説します。ウェブマスターやマーケターが自社ウェブサイトを客観的に理解し、リニューアルの方向性を見つけるための一助となることを目指します。
まず初めにビジネス寄与度分析についてからご紹介していきます。
ビジネスへの寄与度の分析
ウェブサイトが現在、ビジネスにどのように寄与しているか、どの程度寄与しているかを評価することが、リニューアル計画の第一歩です。この分析では、サイトが会社のビジネス目標にどれくらい貢献しているか、どの部分が強みで、どの部分が改善の余地があるかを明確にします。
目標達成度の測定
ウェブサイトの目的とビジネス目標を紐づけて、その達成度を定量的に測定します。例えば、オンラインショップであれば、売上、コンバージョン率、平均購入金額などが重要なKPI(Key Performance Indicator)となります。Google AnalyticsやAdobe Analyticsなどのウェブ分析ツールを活用すると、これらの指標を把握することが可能です。
献度の評価
次に、ウェブサイトが全体のビジネスに対してどれだけの貢献をしているかを評価します。たとえば、全売上のうちウェブサイトからの売上がどれだけ占めているか、ウェブサイトからの問い合わせが全問い合わせのうち何%を占めているかなどを算出します。この評価はウェブサイトの「価値」を明らかにするため、リニューアルにおける投資判断や優先順位付けの根拠となります。
強みと弱みの洗い出し
ウェブサイトの各コンテンツや機能がビジネスにどの程度貢献しているかを分析します。各ページやセクションの訪問数、滞在時間、コンバージョン数などを比較し、どの部分がユーザーに価値を提供しているか、また逆にどの部分がパフォーマンスを阻害しているかを特定します。これらの情報はリニューアルの方向性を定めるうえで非常に役立ちます。
これらの作業を行う際、データの正確さを確保することが重要です。適切なトラッキング設定がなされているか、必要に応じて改善を行うなど、信頼性のあるデータに基づいて分析を行うように心掛けてください。
ユーザーの行動分析
ユーザビヘイビア分析は、ユーザーのウェブサイトでの行動や意識を理解するために行います。ユーザーがウェブサイトに何を求めているのか、どのような問題に直面しているのかを把握することで、より良いユーザエクスペリエンスを提供し、ビジネス目標を達成するための具体的な改善策を見つけ出します。
ユーザーセグメント別の行動分析
ユーザーの属性や行動パターンに基づいてセグメントを作成し、それぞれのユーザーセグメントがどのようにウェブサイトを利用しているかを分析します。例えば、新規訪問者とリピート訪問者、あるいは年齢層や性別によってユーザーの行動パターンが異なる可能性があります。Google Analyticsの「オーディエンス」レポートを使えば、これらのセグメント別のユーザービヘイビアを詳細に分析することができます。
ページパフォーマンス分析
各ページのパフォーマンスを分析して、ユーザーがどのコンテンツに関心を持っているか、どのコンテンツが目標達成に貢献しているかを明らかにします。特に、エントリーページ(最初に訪れるページ)、エクジットページ(離脱するページ)、ランディングページ(広告から訪れるページ)のパフォーマンスは重要です。ページビュー、滞在時間、離脱率、コンバージョン数などを分析することで、それぞれのページのパフォーマンスを把握します。
ユーザーフロー分析
ユーザーフロー分析では、ユーザーがウェブサイト内でどのような経路を辿っているかを調査します。これにより、ユーザーが情報を探しやすいサイト構造になっているか、あるいはユーザーが混乱して離脱してしまうポイントはないかを確認できます。Google Analyticsの「ユーザーフロー」レポートを活用すると、視覚的にユーザーの行動経路を追うことが可能です。
これらのユーザビヘイビア分析から得られた洞察は、ウェブサイトリニューアルの具体的な方向性や改善策を見つけるための貴重な情報源となります。ただし、データの解釈は複数の視点から行い、一部のデータだけに偏らないように注意が必要です。
上記の分析のために、主にWeb解析ツールを使用するかと思いますが、ここでは、特に注目すべき指標とその指標が何を表しているかをあわせてご紹介しておきます。各分析の際にどの指標を軸にするかの参考にしてください。
Web解析の指標とその特徴
指標 | 説明 |
訪問者数 | ウェブサイトへ訪れたユーザーの総数を表します。一定期間内にどれだけ多くの人がサイトを訪れたかを示すため、サイトの人気度や知名度を評価するための基本的な指標となります。 |
訪問回数 | 訪問者がウェブサイトに訪れた回数を示します。一人のユーザーが何回も訪問している場合、その数は訪問者数よりも多くなります。訪問回数の多さは、ユーザーがサイトに戻ってくる可能性や、サイトに対するユーザーの関心度を評価するための重要な指標です。 |
ページビュー | 訪問者が見たウェブページの総数を示します。一人の訪問者が何ページも閲覧した場合、その数は訪問者数や訪問回数よりも多くなります。ページビューの多さは、ユーザーがサイト内でどれだけ活動しているかを示し、サイトの内容がユーザーにとって魅力的であるかを評価するための指標となります。 |
直帰率 | ウェブサイトに訪れた後、一つのページだけを見てサイトを離れた訪問者の割合を示します。直帰率が高いと、サイトに訪れた人々が内容を十分に探索せずに離れてしまっている可能性があり、サイトの設計やコンテンツに問題がある可能性を示唆します。 |
これらの指標を踏まえて、ウェブサイトの現状を評価し、どの部分がリニューアルの対象となるべきかを見極めます。
ユーザー調査
サイトの分析において数値に反映される定量的な分析だけでは不十分で、定性的な分析も併せて実施する必要があります、これは数値分析だけでは理解しきれないユーザーの感情やニーズを把握することができます。その主要なしユーザーフィードバックの取得方法とその特徴をご紹介します。
ユーザーインタビュー
ユーザーインタビューは、ユーザーの生の声を直接聞くことができる非常に有用な手法です。直接話を聞くことで、数値データだけではわからないユーザーの感情やニーズ、体験について深く理解することができます。インタビューは誘導にならないようにインタビュー設計を行ったうえで、慎重に実施する必要があります。
オンラインサーベイ
オンラインサーベイは、特定の質問に対して多数のユーザーから迅速にフィードバックを得ることが可能な手法です。一度に多くの人から情報を得られるため、大量のデータを扱うことができます。サービスの利用者全体からの意見を把握するのに適しています。こちらもサーベイの項目設定によっては正しい回答を得られない場合があります。サーベイの基礎を学んで実施する、もしくは専門家を踏まえて実施することが必要です。
ユーザービリティテスト
ユーザーテストでは、実際のユーザーにウェブサイトを使ってもらい、その操作の様子を観察します。ユーザーがウェブサイトでどのように行動し、どこでつまずくのかをリアルタイムで把握でき、直感的なユーザビリティの問題を特定するのに有効です。
特定のタスクシナリオを用意して実行してもらう。特定の課題を用意してあとは自由に実行してもらうなど、得たい情報によって適した手法を用いることが重要になってきます。
これらのフィードバック取得手法を適切に組み合わせることで、ユーザーの真のニーズや問題点を把握し、リニューアルに役立てることができます。ただし、フィードバックは常に客観的に解釈し、特定の意見に偏らないように注意しましょう。
ヒートマップ分析の活用
ヒートマップ分析は、ウェブサイトの各ページでユーザーがどの部分を最も頻繁にクリックしたり、マウスを動かしたり、スクロールしたりしているかを視覚的に把握するためのツールです。色の濃淡や温度で表現されるため、一目でユーザーの行動を理解することができます。
ヒートマップ分析の具体的な活用方法:
- クリックヒートマップ: ユーザーがページ上でどこをクリックしているかを示します。クリックされている場所が多いほど、色が濃く表示されます。これを利用して、ユーザーが最も関心を持っているコンテンツや機能を把握できます。例えば、クリック数が多いメニューボタンはユーザーにとって重要な機能であると解釈できます。
- マウス移動ヒートマップ: ユーザーがページ上でマウスをどのように動かしているかを示します。マウスの動きが多い場所ほど、色が濃く表示されます。これを利用して、ユーザーがどのコンテンツに注意を向けているかを把握できます。一部のユーザーはマウスの位置と視線を一致させる傾向があるため、この分析から興味の焦点を推測できます。
- スクロールヒートマップ: ユーザーがどこまでページをスクロールしたかを示します。ページの下部に近づくほど色が薄くなり、これによりどの部分までユーザーが読み進めたかを把握できます。これを利用して、どのコンテンツが見落とされているか、またはどのコンテンツまでユーザーが興味を持ってスクロールしたかを理解できます。
これらの分析を通じて、ウェブサイト上でユーザーがどのような行動をとっているかを具体的に理解することができます。そして、これらの情報を基にウェブサイトの改善点を見つけ、リニューアル時にどの部分を改良すべきかの判断材料とすることができます。
注意点としては、ヒートマップ分析はユーザーの行動を視覚的に捉えるためのツールであり、なぜユーザーがそのような行動を取ったのか(動機)やどう感じているのか(感情)を直接知ることはできません。そのため、ヒートマップ分析は他のユーザー調査手法と組み合わせて使用することが推奨されます。
SEOパフォーマンスの確認
EO(Search Engine Optimization)パフォーマンスの確認は、ウェブサイトが検索エンジン結果ページ(SERP)上でどのようにパフォーマンスを発揮しているかを理解するために重要なステップです。この評価はリニューアル時のコンテンツ開発の企画に大きくかかわってくるため欠かせない作業となります。具体的な手法は以下のような点を評価するとよいでしょう。
- キーワードランキング:主要なキーワードについて、現在のウェブサイトがどの位置にランクされているかを把握します。キーワードツール(例:Googleのキーワードプランナー、SEMrush等)を使用して、関連性の高いキーワードについての順位を確認しましょう。
- トラフィック:検索エンジンからどのくらいの訪問者がウェブサイトに到達しているかを確認します。Google Analyticsなどのツールを使用して、検索トラフィック(特に有機検索トラフィック)の量とトレンドを把握します。
- ページのSEO要素:各ページのメタタグ(タイトルタグ、メタディスクリプション、ヘッダータグ等)が適切に設定されているかをチェックします。これらは検索エンジンがページの内容を理解するために重要な役割を果たしています。
- バックリンク:他のウェブサイトからのリンク(バックリンク)は、ウェブサイトの権威性と信頼性を示す重要な指標です。バックリンクの質と数量を評価するために、バックリンク分析ツール(例:Ahrefsr等)を使用します。
これらのSEO評価を行うことで、ウェブサイトの現状の検索エンジンパフォーマンスを把握し、リニューアルに向けて改善が必要なポイントを特定します。例えば、特定のキーワードでのランキングが低い場合、そのキーワードに関連するコンテンツを強化することを検討します。また、特定のページのSEO要素が不足している場合、メタタグの改善を計画します。
ただし、SEOのパフォーマンス確認はあくまで一部の側面を評価するものであり、ユーザーのウェブサイトでの経験や行動については反映しきれません。そのため、これらの分析結果も他のユーザー調査や分析手法と合わせて考慮し、全体のリニューアル計画を立てましょう。
まとめ
ウェブサイトリニューアルのための分析は、非常に複雑なプロセスであり、その成功は事前の準備と計画に大いに依存します。リニューアル検討が始まった段階で正しいデータが取得できていない場合は、まず、リニューアル時に正しい数値が獲得できる状況を整えることをお勧めします。そのデータが取得できた後、正しく分析しリニューアルの企画につなげるというステップをとりましょう。