ビジネスの成果を最大化するために、サイトの運用は重要な要素です。売り上げの獲得といった直接的な貢献はもちろん、見込み顧客の獲得や採用への貢献など間接的にビジネス成果に影響を与えます。しかし、いざサイトを運用してみると様々なトラブルが発生して思い通り運用できない場合や、思っていた効果が出ないといった問題に直面します。
このような問題を避けるための、本記事では効果的なサイト運用を実現する手順紹介します。新しいサイトの運用体制の構築や既存の運用スタイルの改善などに活かしてもらえれば幸いです。
効果的なサイト運用を実現するための手順
今回は新規に運用体制を構築するケースを想定し、運用内容や体制を確定していくステップと、実際に運用フローを作成実行していく流れの2ステップに分けて、具体的にどのような業務を行うかをご紹介します。
サイト運営における目標の明確化と優先順位付け
まず初めのステップはサイト運用の目標を名確認し、複数ある目的のうち優先順位を決定する必要があります。
Webサイトはビジネスの状況が変化するにつれて、役割も変わってくることがあります。例えば、当初はリード獲得に焦点を当てていたが、成果が出たのでリードの育成に重点を置くようになるなどのケースがあります。
このような変化にも対応するため、半期や四半期といったスパンでサイトの役割や目的をステークホルダーと共有し、認識を統一する必要があります。
これにより、ブレなく施策立案を企画、実施することができるでしょう。
また、一つの目的だけでなく、複数の目的が存在することもあります。その場合、優先順位付けを行いましょう。どの目的が最優先であり、次に優先される目的は何かを明確にすることで、経営資源の投資における指針となり、混乱を避けることができます。
このように、目標の明確化と優先順位付けを行うことで、Webサイトの役割や目的を明確にし、経営資源の効果的な活用を図ることができます。
体制と業務フローの明確化
Webサイトの運用の体制の確認と業務フローの明確化は非常に重要です。
フローの中でも二つに分けて考える必要があります。その一つは運用内容が決定されるまでの流れと、もう一つは運用が実行される実行方法です。
下図で説明すると①の部分が運営内容決定するための体制と流れ、②の部分が具体な施策を実行する体制と流れです。
ではこの二つ体制とフローの明確化の落とし込みの必要性とその手法を確認していきましょう。
運用内容決定までの体制とフローの明確化
これは何をどのようにするかを決定するまでの流れを指します。ここを明確することにより、運用中に他部署からの意向が入り急な変更や、中止しといったよくある鶴の一声を避けることができます。
この体制は会社全体の体制の影響を受けるため、現状の組織体制を加味しつつどのようなフローが良いのかを決定してきましょう。
組織におけるWeb担当の配置の例をあげて、その体制のメリットデメリットを簡単に記載します。
- 事業部ごとやサービスごとにWeb担当者がいる場合
- メリット:
事業に寄与しやすい専門的な施策が実行しやすい
- デメリット:
全社を通して統一した動きがとりづらい(遅い)
- メリット:
- 事業部を横断してWebを担当する組織が設置されている場合
- メリット:
サイトとして統一した施策が実行しやすい
- デメリット:
担当部署の専門性の高い情報の取得やその反映に障壁が生じる場合がある
- メリット:
- 広報や総務が兼務している場合(専門家の設置が難しい場合)
- メリット:
固定費が少なくて済む
兼任している業務に親和性があれば、相乗効果を生むこともある。
- デメリット:
専門性がないため、高度な施策の実現となると外部専門家の力が必要となる。
施策実行スピードは遅くなる傾向がある。
- メリット:
以上のような特徴もとらえつつ、どれだけの人員が配置できるかといったリソース配分を加味して無理のない体制を構築しておくことが、スムーズに運営業務のポイントとなります。
続いては実際の作業フローの明確化の説明です。
運用施策実行の体制とフローの明確化
こちらは実行する施策が決定したのち、その実現までのフローの明確化をさします。
多くの企業はすべての業務を内製化することは不可能なため、広告代理店や編集プロダクション、制作会社やシステム開発会社といったベンダーの選定や連携方法の構築が必要です。
その場合、まずは外部パートナーの選定が必要になります。
仮に外部パートナーの選定に誤りがあれば、納期遅延や品質問題、コミュニケーションの不備などが発生する可能性があります。もしも社内に外部パートナー選定するスキルや経験を持つ人材がいない場合は、スキルシェアサービスなどの活用により、中立なスペシャリストの協力を仰ぎ適したパートナー選定を行いましょう。
パートナーや社内の体制が整えられたら、業務フローの確立が必要です。
この業務フローが明確でない場合、タスクの進行状況や優先順位が把握しづらくなります。これによって、サイトの更新や改善が滞り、タイムリーな対応ができなくなる可能性があります。
ここまでが、実際に運用を開始する前提の環境と状況をまとめる作業になります。
まずは、前提条件を明確にし、関係者の前提知識としておくことが以降の運用業務をスムーズに進行する基礎となりますので、しっかりまとめておきたいところです。
次からは実際のサイト自体のコンテンツ追加や更新、業務改善に関する手順のご紹介です。
機能・コンテンツ評価と改善フローの確立
ここからは実際の運用業務を進めるにあたって必要になる項目です。
大まかな以下のようになります。
1.機能・コンテンツの目的を明確にする
2.個別項目から得られる効果を算出
3.業務ごとに評価項目と目標を設定
4.作業フローへの落とし込み
もう少し細かくすると図のような流れを繰りかえすことになります。
コンテンツや機能を分類
サイト上のコンテンツや機能をどのような効果を期待しているのか、どのようなユーザーに影響があるのか、短期的に効果を発揮するのか、長期的に発揮するのかを分類し、関係者間で共通認識を作ります。
どの検討ステータスのユーザーに刺さるものかをカスタマージャーニーマップで確認。
例として参考画像のように、どの項目、コンテンツがユーザーにどのような効果を与えるかを見える化することです。
SEO記事などは興味関心を誘う流入施策に寄与するもの、サービスページに関しては課題認識や、情報収集をメインに対応するものとして認識をそろえることができます。
※もちろん複数のステータスに同時に寄与するコンテンツも多数あるため、大まかにとらえられれば問題ありません。
運用作業の重みづけ、優先順位を決める
サイト運用に必要な投資を短期的な視点と中長期的な視点で検討し、優先順位をつけましょう。
我々が良く活用している分析方法は「運用の必要性」と「効果」や「効果が発生するまでのリードタイム」と「施策の効果、影響力」の四象限マトリクスを活用して投下するリソース配分と優先順位を検討するとわかりやすいでしょう。
左の図は運営において必ず行わなければならないかどうかと、その効果の高さからやめるべきものと工数の削減に取り組むべきかどうかを判定するものです。
例えば、終了となっているエリアは実行してみたものの、効果が取れなかったキャンペーンなどが当たります。もちろんこれらは終了になります。次に自動化・省力化のエリアに属するものこれは例えば細かな技術情報の更新や法的対応による起債項目の更新などが挙げられます。こういった項目は必ず対応しなければならないが、明確に現れるユーザーメリットがないことから以下に時間をかけずに対応するかが焦点となってきます。
次いで右の図の分類は効果が出るまでの時間と期待される効果から施策を分類するためのマトリクスです。
例えば、特定カテゴリーのSEO対策などは一定数のコンテンツ数などが必要なことから長期的に取り組まねばならない施策となります。こういった将来的に効果的であり、効果発生まで時間がかかるものとエリア①。次に広告用LPの改善といったすでに影響力がありスピード感をもって改修が可能な業務はエリア②。残りのエリア③④は特に注力する必要がありませんが、ひとつ前の業務の必要性がある項目などはこちらに入ってくるかもしれません。例えば閲覧は少ないけれども情報更新が必要なコンテンツのCMS化などは、時間がかかっても継続的に発生するのであればエリア③のコンテンツ時間がかかっても早めに取り掛かる必要があるかもしれません。
評価項目の設定
優先順位が確定したらその運用や施策一つ一つの運用効果を測定するための評価項目を設定しましょう。例えば、CTAの改善を行うのであればコンバージョン率を評価項目と入れる。ロイヤリティの向上施策であればユーザーの来訪頻度などが指標となるでしょう。
マイルストーンの設定
目標の設定ができれば、最終的な効果を実現するためにマイルストーンを設定し、進捗を管理しましょう。日々作業が発生する運用においては、毎日その施策の進捗を確認しなければ、予期せぬ遅延や品質低下が発生するため、このマイルストーンとなる中間目標に向けての達成管理は重要な項目となります。
運用作業のフローを確立
改善施策を実施する前に、テスト環境で運用テストを行いましょう。
先に確認していた運用体制に照らし、業務フローを構築します。
実際の作業に落とし込むと、スムーズな連携がいかない場合もありますので、テスト運用を繰り返しブラッシュアップしつつ業務フローを固めていきましょう。
マニュアル化
サイト運用の手順や業務フローをマニュアル化し、チーム内での情報共有や教育を円滑に行いましょう。運用業務は長期にわたるため、個人に知見がたまり俗人化しがちです。それを避けるため更新や新規追加があれば都度マニュアルはアップデートを行い最新化され共有されている状態を目指しましょう。
評価とフォードバック
まず、評価を目標として設定した指針に沿うことによって行うことで目標の達成度を客観的に把握することができます。
次いで把握した達成度を通じて、効果的な施策を選択することが重要です。評価結果から得られる情報やデータを元に、施策の優先順位や投資効率を考慮してリソースの最適な活用と結果の最大化が可能となります。
また、: 業務の評価と改善フィードバックは、チームのモチベーション向上にも寄与します。成果や評価のフィードバックを受けることで、チームメンバーは自身の業務に対する意識を高めることができます。また、改善の提案やフィードバックを受けることで、チームメンバーの成長機会を提供することもできます。
このような持続的改善がサイトの競争力を維持し、変化するユーザーのニーズや市場動向に対応することにつながります。
運用フローのアップデート
評価とフィードバックに応じて施策の変更が発生する際には、再度運用フローの見直しを行います。
改善を実施しても、業務フローを更新せず、成り行きのままに運用を行うと無駄なフローが残ってしまって非効率になることや、更新もれやバグが発生するといった思わぬトラブルを生みます。
安定的な運用には業務フローのメンテナンスは必須です。
以上が、サイト運用を確立するまでの簡単な流れのご紹介となります。
サイトの規模や人員体制に合わせてどの程度リソースを割いて取り込めるかを判断しながら実行いただけるとよい運用フローが確立できるのではないでしょうか?
次は、サイト運営、運用を効果的に行うため、代表的な施策例をご紹介します。
効果的な施策の代表例
運用における代表的な施策を短期、長期といった時間軸で分類してご紹介します。
先にご説明した運用業務の重みづけ、優先順位の設定と合わせてどういった施策があるのかを確認し、取り入れていっていただければ幸いです。
短期的に効果的な施策
数週間から数日程度で効果が分かる可能性の高い施策をご紹介します。
コンテンツ運用をやめる
評価測定において効果が見込みづらい項目の削除です。
一見当たり前のように思われますが、経験上最も効果的な施策です。
現場の運用担当者は、タスクを分解すればするほど、その作業自体を仕事ととらえがちです。また現状維持バイアスに陥れば、安定を優先することから効果のない作業やフローを維持し続ける傾向があります。
このような状態は作業現場レベルでは判断が難しく、プロジェクトマネージャーやサイトオーナーレベルで俯瞰的に状況を判断、評価し対応を行う必要があります。
LPO(ランディングページ最適化)
ランディングページのデザインやコンテンツを改善し、コンバージョン率を向上させます。ランディングページというと広告からのランディング先としてのページを想起される方もいますが、それだけではなくありとあらゆる流入におけるランディングページを対象とすべきです。ページごとの影響度を判断し、優先順位の高いページから施策を行うことで、短期的な改善が期待できます。
CTA(コールトゥアクション)改善
サイト内のCTAボタンやリンクの配置やデザインを改善し、ユーザーのアクションを促します。
こちらも特に共通パーツとして実装しているものを中心に改善を行うことで効率の良い改善が実現できます。
ナビゲーション改善
サイトのナビゲーションメニューやサイトマップを見直し、ユーザーが求める情報に簡単にアクセスできるようにします。
グローバルナビゲーションなどインパクト大きなものの改善からスタートし、次いで有力なランディングページや閲覧数の高いページなどを中心に関連ナビゲーションや検索ナビゲーションといった導線の改善が効果的です。
中長期的に効果的な施策:
自動化や省力化
サイト運用における繰り返し作業やルーチンワークを自動化するために、外部ツールの連携やRPA(Robotic Process Automation)やツールの導入を検討します。
人的リソースを削減することはもちろん、ミスを減らすことにもつながるため自動化できる部分は積極的に自動化することをお勧めします。
しかし、開発にそれなりの資金が必要な場合もあることからその費用対効果を慎重に判断しましょう。
ツール導入
サイト運用に役立つツールやソフトウェアの導入を検討します。たとえば、顧客接客ツールやSEOツールやウェブ解析ツールなどです。
目的に合わせたツールを導入し活用する事でユーザーのロイヤリティの向上や、作業の効率化に貢献できるでしょう。
各種ガイドラインの整備
サイト運用に関するガイドラインやベストプラクティスを作成し、運用の統一性と品質を向上させます。これにより従業員の退職や異動に備え、長期的に安定した運用を実現することができます。
コンテンツの蓄積
長期的なサイト運用のために、コンテンツの企画開発や各種媒体への適合を行います。動画、ウェビナー、テキスト、メルマガ、SEO記事、ホワイトペーパーなど、多様な形式のコンテンツを蓄積します。これらは資産となりサイト価値の維持に貢献することから長期的に行う施策として取り組むべきです。
以上が、効果的なサイト運用手法に関する記事の構成です。ご参考にしていただければ幸いです。
まとめ
以上サイト運用を行うにあたって、体制の構築から具体的な業務フローの確立方法をメインに、実際に取り入れると効果的な施策例をご紹介していきました。
サイト運用の目的はあくまで最終的にはビジネス貢献になるかと思います。運用となると業務や作業に注力される傾向が強いですが、常に目的を忘れず、全体の方向性と効果を把握しつつ運用につなげることが成功の基本だということを意識して継続的に取り組めれば結果はついてくるのではないかと思います。